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恋愛詐欺師はウブの虜

 リビングで水流添といちゃいちゃしながらテレビを見ていた真己は、俊が風呂から出て来たことに気づくとさっとキッチンに向かった。
「俊さん、プリン冷えたから、もう食べられますよ。リビングで待っててください」
 おー、とそれは可愛らしく笑った俊が浮き浮きとリビングへ向かう。ホント可愛いんだよなと思った真己は、お盆にプリン三つとスプーン三本を載せてリビングに運んだ。本日は以前から俊にリクエストされていたプリンを作ってみたのだ。
「うわっ、マジでプリンじゃんっ。すげー真己、プリンも作れるんだなっ」
 プラスチック製のカップに入ったプリンを見た俊は目を輝かせて言った。
「なんかクリームとか載ってる豪華なやつも食ってみたいっ」
「クリームが載ってる豪華な……プリンアラモードかな? いいですよ、作ってみます」
「なんで真己、そんな優しいの……」
「いや、プリン作るくらいで優しいとか」
 真己が言うと、俊がキュンとした表情を浮かべた。長ソファに座る真己の隣に移動して、真己にぎゅーっと抱きつく。
「俺なんかに優しくしてくれんの真己だけだもん、真己、好き好きっ」
「俊さん……」
 今度は真己がキュンとしてしまった。家族愛を知らない俊にそれを与えたいなんて、そんなおこがましいことは思わないが、ありきたりな家族の暮らしなら味わわせてあげられる。真己は思わずよしよしと俊の頭を撫でて言った。
「プリン、食べないんですか?」
「真己、食べさせてっ」
「もー」
 俊の必殺技、絶対カワイイ上目遣いでねだられた真己が、にこにこしながらプリンを手に取る。その瞬間、俊はきらりと目を光らせ、真己に抱きついたまま挑戦的な目を水流添に向けた。気づいた水流添が、この野郎、という表情を見せたところで、真己が無邪気に言った。
「はい、俊さん。あーん」
「あーん」
 伝説の「あーん」だ。俊はおのれの武器、カワイイを炸裂させて、もっともっとと真己にねだって「あーん」でプリンを完食した。真己からは見えない角度で水流添に、フン、と笑ってみせる。ビキッと額に青筋を立てた水流添が、プリンを持って真己に言った。
「真己。俺にもあーんして」
「は? 水流添さんは大人でしょ?」
 真己がどん引きして言ったとたん、水流添と俊が大笑いをした。真己一人、まんまと俊の手管に乗せられたとは気づかず、一つ年上の俊にティッシュを一枚差し出した。
「俊さん、口の周り拭いて」
 水流添と俊、笑死。
 
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