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閨盗賊

 罅割れた月が、打ち捨てられた邸の窓に浮かんでいる。ベッドで眠る少年へと青白い光が届いていた。東洋の血が半分入ったその顔も身体も、十四歳にしては幼げで、か細い。少年は盗賊の根城にはふさわしくない、穢れを知らない准男爵の子息・レンだ。身代金のために拉致されてきたのだ。
 黴臭いベッドの端に、カイルは全裸で腰を下ろす。カイルは盗賊団の棟梁の息子であり、だからこの人質の少年をどうとでもすることができる。……そのはずなのに、少年を穢さないと信じてもいない神に誓わされ、この四日間それを守ってきた。
 育ちがよくない十七歳のカイルにしてみれば、いい加減に我慢の限界だった。顔に流れ落ちる金髪の下で翠の目をきつく眇める。獣じみた盗賊の顔つきになって、レンへと手を伸ばす。
 枝のような両腕に押さえられている毛布を、胸元から引きずり下ろす。薄っぺらい胸が露わになる。ほのかに色づいた小さな乳輪の横にはカイルが肌を吸った跡がついている。盗賊仲間を退けるためのスタンプだとレンを言いくるめて、つけたものだ。
 赤い跡に乗せた人差し指を、横に滑らせる。なめらかな乳首にそっと触れる。清楚な触り心地で――気持ちよさに、カイルは溜め息をつく。
 やわらかな肌のなかから小さな粒が尖り出てくる。その粒を摘んで指先で転がしながら、カイルは自身の下腹部に右手を伸ばして陰茎を握り締めた。すでに痛いほど充血して反っているそれを忙しなく扱く。
 レンの胸へと顔を伏せ、指で摘まんでいた場所を口に含んだ。粒をしゃぶったとたん、右手のなかの茎が大きく跳ねて白濁を噴いた。頭も身体も芯から蕩けるような快楽を味わっていると、レンが「ん…」と喉を鳴らした。カイルが胸から顔を上げたのと同時に、レンが眠そうに薄目を開けた。真っ黒い眸がカイルを見上げ、眦をやわらげる。寝ぼけ声が呟く。
「花が、咲いてる――マロニエの花」
 カイルが散らした体液の匂いを、花の匂いと勘違いしているのだ。
「好きな花なんです」
 あっさりと獣の牙を抜かれてしまったカイルは、レンの黒髪をそっと撫でた。
「……そうか。まだ真夜中だから、ゆっくり寝てろ」
 手の下で、安心した寝息がたちはじめた。
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