今日から悪魔と同居します

小説

今日から悪魔と同居します

著者
四ノ宮慶
イラスト
小山田あみ
発売日
2018年05月20日
定価
748円(10%税込)
草食系スイーツ男子、スパルタ上級悪魔に尽くされる!?

「あなたは悪魔の末裔なの」と、母からの衝撃的な告白を受け、その日のうちに上級悪魔・黒葛原に弟子入りさせられた、草食系スイーツ男子の乾凌平。
黒葛原曰く、世界のため、凌平は冥府の門を閉じる運命なのだそうだ。それにはまず、精を出してあることを成し遂げねばならないという。
平凡な将来を夢見ていたのに。スイーツさえあれば幸せだったのに――!
凌平は、魔力を発現させるため、欲望を高められるだけ高められ放置される……というドMの生活を送ることになってしまった!
世界の行く末が一人の男子のチン○にかかってる!?

オンライン書店

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • honto
  • 7net
  • 紀伊國屋書店
  • TSUTAYA
  • Honya Club

電子書店

  • Renta!
  • パピルス
  • amazon Kndle
  • booklive
  • ebookjapan

登場人物紹介

乾凌平(いぬいりょうへい)
乾凌平(いぬいりょうへい)

甘いものに目がない草食系スイーツ男子。実は悪魔の末裔で、冥府の門を閉じる運命を背負うことに。

黒葛原凱(つづはらがい)
黒葛原凱(つづはらがい)

試し読み

 小さな頃から、かわいい物が大好きだった。
 色とりどりの千代紙に、ビーズのアクセサリー。
 中でも一番は、かわいらしくデコレートされた甘い甘いスイーツたち。
『いつもお留守番、頑張ってくれるから、ご褒美にショートケーキ買って帰ろう』
 共働きで両親が留守がちだったせいか、母さんはいつの頃からか、週末のおやつに近所のケーキ屋で一つだけ好きな物を買ってくれるようになっていた。
 ガラスケースに並んだスイーツの中から一つ選ぶのに、すごく頭を悩ませたっけ……。
 あれは、小学二年生のときだったろうか。
 いつものように母さんとケーキを買いにいったオレは、ガラスケースを眺めるのに夢中で、ほかの客やその足許に蹲ってたミニチュアダックスに気づかなかった。
「……あ」
 何か踏んづけたかな、と思った直後──。
 キャンッ!
 甲高い鳴き声が響き渡ったとほぼ同時に、左の脹脛に鋭い痛みが走り抜けたんだ。
 その後の記憶はあんまり残っていない。痛くて、怖くて、とてもびっくりして、大声で泣き叫んだことだけ覚えてる。
 オレに尻尾を踏まれて驚いたミニチュアダックスに?まれたと聞かされたのは、病院で手当てを受けたあとのこと。
 以来、オレはすっかり犬が怖くなってしまった。
 犬は少しも悪くないって分かっていても、急に?みつかれるかもしれないと思うと、得体の知れない恐怖を覚えるようになってしまったんだ──。
        ◇   ◇   ◇
「あ、くまの……まつえい」
「そ」
 エプロンを着けたまま玄関先まで見送りに出てきた母さんがこともなげに頷く。
「え……? ちょっと待って。何言ってんのか、意味分かんないんだけど?」
 大学進学のため東京へ旅立つ当日になって、いきなり何を言ってるんだ、この人は……。
 キャリーバッグの持ち手を握り締め、オレは眉間に皺を寄せて母さんの顔を覗き込んだ。
「母さんも、早く話さなきゃいけないとは、思ってたんだけど……」
 ほんの少しバツが悪そうな顔をしたかと思うと、エプロンのポケットに両手を突っ込んで肩を竦めてみせた。
「悪魔っていったって、うちの家系はちょっとふつうの人より霊感が強いとか、占い師で食べていけるって程度の魔力しかないし、凌平だって魔力の兆しがないでしょ?」
 言われてみれば、母さんは妙に勘が働いたし、親戚には占い師や霊能者を名乗る人がたしかに多かった。
「いや、だけど、魔力って……」
 オレの頭の中は、疑問符と感嘆符でいっぱいだ。
 いきなり悪魔の末裔だとか、魔力がどうとか言われても、信じられるわけがない。
「そう簡単に受け入れられないと思うけど、世界中には人間に紛れてたくさんの悪魔が暮らしてるの」
「はぁっ?」
 間の抜けた声が勝手に零れる。
 母さんが言うには、悪魔はけっして想像上の物ではなく、今も世界中に存在していて、そのほとんどは人間として生活しているというのだ。
 ただ、現在の日本には優れた魔力を持つ純血の悪魔はあまりいなくて、人間と交配したりして魔力が弱まった悪魔がほとんどらしく、人間と同じような人生をまっとうするらしい。
「けどねぇ、ごくたまに、突然先祖返りして強力な魔力をもつ子が生まれる場合があるのよ。そういう人は上級悪魔として英才教育を受けるために、ヨーロッパのどこだかにある特別な機関に入れられるらしいわ」
「へえ、そうなんだ」
 オレには他人事にしか聞こえない。
「でもさ、ふつうに人間として暮らしていけるなら、別に話すことなかったんじゃねぇの?」
 ムッとするオレを、母さんは怒ったような、それでいて困ったような顔で睨んだ。

Search

キーワード

カテゴリ

  • 作品へのご意見・ご感想
  • 原稿募集